コンピューター:師匠と弟子の会話:本の出版


弟子:「またまたずいぶん長いことこのコーナーが放置されましたね。C言語講座もちっとも追加されないし。」
師匠:「実は勤務先の社長と妻以外に内緒にしていたのだが、本を書くのに疲れていたのだ。」
弟子:「2000年9月20日頃発売の”C for UNIX”ですね。」
師匠:「そうなのだ。5月中旬に着手して、仕事の合間や夜、通勤途中などがんばって、8月末に一応大体完了したのだが、本当に本を手にするまでは黙っていたのだ。」
弟子:「部下にも友人にも親にも知らせていなかったようですね。」
師匠:「そう。部下はびっくりさせようと思ったのと、親はそういう話をすると、”またあんた、うまい話にだまされてるんじゃないの?”とすぐ疑われるからな。いくつになっても子供のことは信用できないらしい。まあ、自分としても本当に本を見るまでは実感も出来なかったからな。」
弟子:「本を書いたきっかけはなんだったのですか?」
師匠:「C言語講座を見てくれた(株)秀和システムの上島さんがメールをくれたのだ。で、一度お会いして、じゃあやりましょう、と。その後先日本を受け取るときに2度目にお会いしたのだが、その間はずーっとメールだけで本が出来てしまった。便利な世の中だ。」
弟子:「本を書くのはもちろん初めてですよね?」
師匠:「もちろん。まあC言語講座のネタがあったので、それほど苦労はしなかったけどな。導入編・入門編・実践編・総括編から出来ていて、入門編はほとんどC言語講座そのものなのだ。実践編ではTCP/IPとfork(),exec*()を使ってマルチクライアントのサーバを作り、CURSESを使ったクライアントも作っている。UNIXならではのプログラムテクニックの本にしたのだ。はじめはC言語講座の延長でシステムコール中心の本に、と言うことだったのだが、より実践的な内容にシフトしてきて、本のタイトルも割と最後の方に決まったのだ。」
弟子:「導入編・総括編はどんな内容なのですか?」
師匠:「普段事業部で部下に説教くさい話をしたりするのだが、そういう内容や、これからプログラム関連の仕事を目指す人へのアドバイスみたいな感じの内容など、言いたいことを本音で書いてある。このへんは人によって思想も違うと思うので、あくまで私の個人的な経験に基づいた意見、として考えて欲しい。」
弟子:「師匠は説教くさい話が好きですものね。ところで、本の表紙や内部のレイアウトなどは師匠が考えたのですか?」
師匠:「私が手をつけたのは本当に文章とサンプルソースだけなのだ。デザインはデザインのプロが、レイアウトはレイアウトのプロがやるのだ。このへんは趣味と違って仕事の世界では割り切って専門家による分担がはっきりしている。でも感心したのは編集の上島さんはC言語などは全く専門外のことなのに、しっかり理解して、図やフローなんかを作ってくれて、分かりにくい解説の指摘など、実にすばらしい仕事をしていた。私としては私の本、というより、上島さんの本、という感じがするくらいなのだ。」
弟子:「でもどこにも上島さんへのお礼や、よくある家族へのお礼などは出ていませんね。」
師匠:「上島さんとしては編集がしゃしゃり出るのは良くない、と考えておられるようだ。私のように単純な人間だと、出して出して、といってしまいそうだが、人間の出来が数段違うらしい。家族へのお礼などは忘れただけだ。まあ家の中では最後の校正の部分などしかやらなかったから、疲れて不機嫌になることがあった以外は迷惑はかけていないと思うしな。」
弟子:「これで印税生活ですね。」
師匠:「皆にそういわれるのだが、じっさい、こういう専門書はそんなに数は出ないだろう。ただUNIXとCの標準的な内容なので意外と長く内容は生きると思うが。まあ私としては無名の会社で仕事をしていて、営業や求人の時にでもネタに使えればそれでいいのだ。それに新人教育にも使えそうだしな。本業以外で儲けようとすると失敗する、と言うのはこの世の常識だからな。あくまで本は本業のための補助的なものだと考えたい。」
弟子:「これから本を作ってみたい、と言う人へのアドバイスはありますか?」
師匠:「まだ自分の本の評価も分からない状態で何も言えないが、書きたいテーマがあったらC言語講座のようにまとめておくことだ。頭で考えているだけでは駄目。それから意外と本というのは短期間で作り上げるというのにびっくりしたのだ。だからなおさらもともと準備が出来ていないと開始してから相当苦労するだろう。あとは今回私がお世話になった上島さんのようにしっかりした編集者と出会うことだ。何しろ大抵の人にとって初めてのことだろうから、出版契約や進め方など分からないことが多いと思うのだ。しっかりした人に担当してもらえないと大変かもしれない。」
弟子:「でも編集の方と知り合うのが難しいですよね。」
師匠:「そうだ。でもそれは普段の仕事でも全く同じ。チャンスは誰にでも平等に回ってくるのだ。そのための準備をしておくことと、チャンスを見逃さないこと、チャンスを生かせるだけのさまざまな力をつけておくこと、怖がらずに実行してみることが大切だ。私もまさか本を書けるとは思ってなかった。私の親父は中学の英語の先生をやっていたのだが、英語の教材や本を作っていたことがある。だが、親父がほとんど作っていても、本などには大学教授の名前が大きく載っていたりして、子供ながらに、世の中有名で力が無いと駄目だな、と思ったものだ。まあ親父は最後は校長までやったから、自分の親ながら立派だと思うのだが。まあ、だから無名の中小企業にいる私が本を書けるとは本当に考えもしなかった。でも私としては部下がそういうふうに、はじめから無理だ、とか、どうせ小さい会社だし、とか、学歴も無いし、とか考えているとしたら悲しいし、それを打ち破ることが出来るのだ、と言うことを見せたかったのだ。だから上島さんからメールをいただいた時には心の中では、絶対に作るぞ、とはじめから考えていたのだ。こんなチャンスはそうそうまわってこないからな。営業で新規の仕事の話が来るときもそうだが、これだ、と思ったら絶対にやった方が良いのだ。やらずに後で後悔するような考え方は嫌いなのだ。」
弟子:「師匠が本を出したことが皆の刺激になってより会社や仕事が生き生きしてくるといいですね。」
師匠:「そのとおり。みんなやれば何だってできるのだ。そもそも大幅赤字だった事業部が今では5年以上連続黒字で、ほとんど大きな失敗らしい失敗もせずに、お客様との関係を維持してきているだけの集団になっているのだ。事業部を作った当時からすれば考えられないほど皆で進歩したのだ。ただ、ここで留まってはならない。10年後を考えて欲しい。皆年を取り、給料も上がるのだ。そのときにそれに見合った仕事をできるように今から準備しないといけないのだ。同じことをやっていても駄目なのだ。それぞれがより大きな仕事をこなしていけないと駄目なのだ。新しく加わる仲間を指導し、導いていけなくてはならないのだ。」
弟子:「今回は一段と説教くさくなりましたね。」
師匠:「まあ、なかなかこのコーナーも書けなくて欲求不満がたまっていたんだろう。明日親父にこの本を持っていくのだ。まだ本のことは一言も知らせていない。どんな言葉が返ってくるか楽しみなのだ。私はいろいろな意味で親父の嫌な面を見て、自分はこうはなりたくない、と考えてきた。が、結局似てしまっているらしい。妻や母にそういわれるのだ。まあ、親父よりちょっと早く結婚して、だいぶ早く持ち家を持ち、ボーナスも親父を超えたかもしれないが、親父は本を出していた、という点に並べるのはちょっとうれしいのだ。どうせ親父はたいして誉めてくれないと思うのだ。でもそんな親父をいつかギャフンと言わせたい、というのも私の密かな目標だったりするのだ。人間目標はたくさんあったほうが良いのだ。」
弟子:「他にどなたにこの本を見せたいのですか?」
師匠:「私をコンピューター関連に向かせてくれた勤務先の社長。社長にだけは書き始めたときに相談したのだが、今の私があるのはいろいろな面でまさに社長のおかげなのだ。あと、大学のときに工業化学科にいながら、情報処理関連の先生にお世話になったので、その先生に。そして私のところに仕事を出してくれている取引先の担当の方々。さらにC言語講座を熱心に見てくれている皆さん。」
弟子:「本の内容には自信はあるのですか?」
師匠:「それが結構あわただしく作ったのであまり無いのだ。初めてだしな。本のサポートページも作り、メールアドレスも書いたので、おそらく指摘のメールなどが来ることだろう、というか来ないと寂しいな。まあ人それぞれ考え方もいろいろあるので、こうしないといけないのか、と捕らえるのではなく、こういう考え方もあるのね、という感じに読んで、自分に合ったところをどんどん活用してもらえるとうれしいのだ。仕事・プログラミングのノウハウもかなり盛り込んだが、私としては秘密主義は嫌いなのだ。汎用的な技術や情報は公開するべきだと思っている。秘密にすることによってシェアを守ろう、とかそういう考えは嫌いなのだ。フリーソフトの品質・性能を見れば一目瞭然だ。後悔することによっていろいろな方が係わり、よりいいものができるのだ。ユーザーを縛らなくたって仕事は来るところには来る、と私は信じている。」
弟子:「長くなりましたので、最後に本に関して一言。」
師匠:「読んでくれた方にとって、一つでも読んでよかったと思える技術などがあることを祈るだけなのだ。この技術を流用して仕事などに活用してもらってももちろんかまわないのだが、くれぐれも自分でしっかりテストをしてからリリースして欲しい。また、質問や指摘、要望など、メールでいただけると幸いなのだ。」


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