お客さんが望んでいること

 年度末・子供の春休み・入社式となかなか忙しく、ページの更新も滞ってしまいましたが、勤務先では全事業ともに業績が良く、特にソフトウエア関連は非常に良い成績で期末を締めくくることができました。部員の積極的な行動はもちろんですが、良いお客さんに恵まれていることに感謝せねばなりません。また、期待の新入社員を迎えることができ、先日入社式を行いました。私が入社式でスピーチした内容は、

・人生限りがあるから努力をする:積み重ねを意識して:手帳の活用を

・自分で選んだ仕事は苦労とは言わない

・チームワーク:個人の役割

・お客さんが望んでいること

この4点でした。私は基本的にスピーチする内容を前準備することはせず、その場の雰囲気で話す内容を決めるのですが、今年も手帳には入社式が始まってから上記4行を書いたのみでした。あまり内容を固めすぎると一方的な話し方になりがちで、そうであればもともと書面で渡せば良く、せっかく顔を合わせて話をするのですから、表情を見たり、メモの取り具合を見たりして話した方が効果があると考えています。

 さて、今回はこの中から「お客さんが望んでいること」について書いてみたいと思います。

「お客さんが望んでいること」

 このところ私の勤務先のソフトウエア関連はお客さんから非常に多くのご相談・ご依頼をいただき、メンバーが少ないため対応しきれない状況が続いているのですが、お客さんがなぜ我々にご相談いただくかをお聞きする機会が何度かありました。ポイントは、

・臨機応変に対応してくれること

・継続してサポートしてくれること

この2つだと思います。もちろん前提として技術力が高いことや、コミュニケーションがしっかりとれること、メンバーの人間的な魅力などがあると思いますが、依頼する側の立場としては上記2点は非常に重要ということのようです。裏を返せばこの2点をしっかり対応しているソフトウエア開発会社が少ないということでしょう。

 最近ではオフショア開発や派遣による常駐での開発が盛んなのですが、オフショア開発では日本人と違う価値観の人々に仕事を依頼するため、基本的に契約がすべてで、少しでも契約の範囲を超えるような内容を相談すると、仕様変更として追加費用が発生してしまったりすることが多いものです。オフショアでなく国内でも受託開発ですと同様な問題が発生することがあります。大手さんでも会社によってカラーがあり、契約にうるさい代わりに契約したことは完璧にこなすタイプや、多少仕事の問題も起きるものの、契約の解釈もある程度広く取ってくれる会社など様々です。基本的には依頼するお客さんがどれだけ仕様をきちんと契約時点で固められるかがポイントになりますが、開発ですからある程度開発を進めた時点で仕様を変更したいことは意外と多いものです。業務システムですともともと業務内容が固まっていて、仕様もかなりFIXできる場合も多いようですが、製品開発など、世の中にないものを作り出したい場合は、トライアンドエラーで進めざるを得ないことも多く、その場合には社外に依頼することがなかなか難しいケースが多いようです。

 私のところでは、もともと自社製品のCADシステムを開発していたこともあり、トライアンドエラーの進め方は当たり前という認識が定着していますし、そういう仕事の方がメンバーもやり甲斐を感じるためか、とりあえずプロトタイプから作ってみましょう、という進め方が得意です。WEBシステムの開発でフレームワークを使う場合などは根本部分の仕様が変更になると大幅な変更が必要になる場合もあり、仕様変更はつらい開発もあるのですが、基本的には、「なんとかしましょう」と対応するメンバーばかりで、特に技術的な内容の追加変更に関しては大抵担当者レベルで対応してしまいます。ドキュメントが増えたなどという場合は交渉させていただくこともありますが、技術的に何とかできないというのはメンバーとしてもプライドが許さないと考えているのか、かなり前向きに対応しています。お客さんとしてはそういう部分が気に入っていただけ、仕様が決まらないうちから我々に相談してくださることが多く、結果として仕事が継続的にいただけているということでしょう。

 もう一つの、「継続してサポート」というのも、オフショア開発では難しい場合もあるようです。海外では日本と異なり転職が非常に盛んで、同じ人に依頼することが難しいようです。国内でもその傾向は増えているようで、派遣に出てしまっていてその担当者は対応できない、といわれてしまうことが多いということをお聞きしました。開発というのはかなり属人的な面が強く、立派なドキュメントがあっても、複雑な仕様やノウハウはやはり担当者しか分からないケースは多いものです。同じ会社で請けてもらえるといっても同じ担当者が対応、あるいはせめて支援できなければかなり厳しいのです。

 私のところでは派遣・常駐はできるだけ避けるような仕事の進め方をしていますので、該当の担当者が忙しくて対応できない場合でも、同じ社内で支援することはできますから、継続的に同等レベルの対応がしやすいということが安心できるようです。

 個人で仕事を請けている方に依頼するのも同じレベルでサポートを期待できますが、ほとんど専属で依頼し続けないと、他の仕事を始めてしまうとすぐに対応してもらうことが難しいこともあるでしょう。

 それぞれの業務形態で得意・不得意な部分があるのは当然ですが、ついつい自分のやり方をお客さんに押し付けてしまいがちです。改めてお客さんが何を望んでいるのかを考え、自分たちがどのような対応をするのが一番喜んでいただけるのかを考えてみてはいかがでしょうか。技術的に問題がないのは技術のプロなのですから当然で、それをどのように提供していくのかを考えることが良いお客さんに恵まれるかどうかの分かれ目かもしれません。

2007.3.28

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from 2007/1/13