チームワークと個人の役割

 先日、子供の小学校の入学式に参加し、校長先生のお話で、3つの種をプレゼントします、という内容があり、3つの種は「勉強の種」「友達の種」「元気の種」で、それぞれ小学校で大きく育てましょう、というお話だったのですが、校長先生が「では1つ目の種をあげますよ、受け取ってください。」と言うと、子供たちが両手でお皿を作っていたのがほほえましい感じでした。このまま素直に元気に育ってほしいですね。私の父は今では定年退職してかなりたちますが、中学校の校長をしていました。入学式や卒業式でどのようなスピーチをしていたのか、現場を見ておくことができなかったのが悔やまれます。当時は私と妹で、どのような校長先生が好かれるかなどを父にアドバイスしたものでした。子供の心をつかめるタイプとそうでないタイプは明確に差があり、私が印象に残っている校長先生は、高校時代の校長先生で、男子校の校長ということでほとんどの先生の話は無視されたりヤジられたりしていたのですが、その校長先生だけは違っていて、皆が壇上に上がるのを楽しみにしていたものです。基本的に一言しか話さず、あとは唐突に「今日はマラソン大会を祝して一曲」と歌を歌ってくださったり、生徒の心をつかむのがとても上手な先生でした。そのあとに赴任した校長先生は全く逆のタイプで、真面目な話を長々と聞かされ、学生からは「歌えー」とヤジが飛んだりしていました。たくさん話して印象に残らないくらいなら、ひとつだけでも深い印象を与えた方が良いのは言うまでもありません。そんなアドバイスを父にしたものです。

 さて、だいぶ余談が長くなりましたが、今回のテーマは、先日私が入社式で話をした「チームワーク」についてです。

「チームワークと個人の役割」

 スポーツでも仕事でもチームで行動する機会は非常に多いものです。一つの目的に向かって集まったチームであったり、たまたま一緒になったチームだったり、チーム発足のきっかけは様々ですが、結局は一緒に何かをしようということに変わりはなく、不思議なことにチーム内でリーダー格になる人をはじめとして、役割や位置づけが決まってくるものです。

 私は子供のころ、非常に臆病で引っ込み思案な性格でしたので、集団行動は苦手でした。基本的に目立たないようにおとなしくしていようという考えで、スポーツも基本的には団体競技は苦手で、スキーやテニス、卓球など個人種目ばかりやってきました。根本的な気持ちとして、うまくいったときに自分の手柄だと言い切れないことと、失敗したときにチームに迷惑をかけるのがいやだったのだと思います。しかし、なぜか勉強はできたので、クラスでは学級委員か校紀委員をやらされ、実に嫌だったのでした。

 チームの中で居心地が良くなるためには、自分の役割がきちんとあること、つまり、自分のポジションが明確なことが必要だと思います。会社であれば自分の担当分野、得意分野がしっかりしている人ほど、チームで居心地がよく、活躍できるのです。自分のポジションが明確な人は、その分野で頼りにされますし、自分が困ったときには遠慮なく相談することができます。何もできない人は相談するのも気が引けるものなのです。会社で活躍するためにはまずはじめに自分のポジションを固めることです。

 先日私が所属している町内のソフトボールチームが、ある大会で優勝しました。私が参加させてもらって確か4年くらいになりますが、優勝は初めてです。やっぱり非常にうれしかったのですが、私は基本的に野球経験者でもなく、チームでは補欠程度のポジションで、守備が下手なので試合ではたいてい打撃だけを担当していました。打撃も練習ではそこそこ打つものの、試合では独特の緊張感と、なれないピッチャー相手に大した活躍もできなかったのですが、このところ非常に打撃好調で、今回の大会では毎試合まずまずの貢献ができました。最後の2戦はメンバーが集まらず、私も守備にもついてギリギリの人数で戦ったのですが、終わってみればやっぱり何もしなくて優勝したのではなく、少しは自分も力を出して勝てたのがよりうれしいものです。

 自分が活躍できなかった試合の後の反省会(飲み会)では当然ほとんど自分の話題は出ません。責められることもほとんどないのですが、やっぱり居心地が悪いものです。少しでも活躍できると、そういう場でも皆が声をかけてくれ、居心地がまったく違います。実際周りの人は自分が気にしているほど何も考えていないと思うのですが、自分自身の気持ちが違うのです。この歳になってようやく団体競技の楽しさが分かってきたというのは何とも情けないのですが、なんでも参加してみるものですね。

 さて、この4月に会社や学校で新しい組織に加わった方も多いことでしょう。まずは自分のポジションを固めてみるのが良いと思います。新しい組織に加わるとついつい自分をアピールせねばと自分の話ばかりしてしまうのですが、大抵は逆効果になります。コミュニケーションの基本はまず聞くことです。相手が気持ち良く話をしてくれることが大切なのです。組織の中で地味ながらもなくてはならないポジションを担っている人というのはそれほど自分のアピールばかりしている人ではない場合が多いものです。こつこつとやることをやり、上手に聞き、突っ込まれ上手なくらいの方が皆に好かれるものです。立場が上になってくるとそれなりに影響力を持った発言や行動も必要ですが、新しく加わる立場であればまずは自分のアピールより自分が役立つこと、そして周りが気持ち良く話をしてくれることを目指すことが確実でしょう。

 一人一人が自分のポジションをしっかり守っているチームは強いものです。また、普段はほとんど話をしていないチームでもそういうチームは強固な結束力を持っているものです。皆さんも是非そんなチームの一員として活躍してみてください。

2007.4.10

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from 2007/1/13