自分で選んだ仕事

 なぜかその気になってきたので、連続で更新です。

 この時期は新卒採用の時期でもあるのですが、それと同時に社内では昇給の検討の時期でもあります。私の勤務先では5月分の給料から昇給するという決まりが私の入社以前から決まっていますので、ちょうどこの時期に昇給の判断をします。私の勤務先では昇給とボーナスの分配は各部の責任者が検討し、社長・会長が承認するという仕組みですので、各部の責任者のリーダー力の見せ所となります。基本的には昇給額に限度はありません。もともと事業部単位の独立採算制に近い運営をしていますので、どれだけ昇給しても、会社規定の利益をたたき出し、ボーナスもメンバーが満足できるような分配ができる成績の背景があれば遠慮なく昇給できます。もちろん減給もあります。減給は当人もつらいものですが、そのような決定をするリーダーも辛いものです。その代わり減給の原因が改善できればすぐに昇給してあげてもかまわないという特例のような運用もしています。

 実際私が直接手がけているソフト開発チームではこのところ非常にメンバーが良くがんばってくれていて、私の方針の一つである「各自の得意分野を明確にし、お客さんに名指しで相談を受けられるようなメンバー」になってくれていて、良い業績が続いています。現状受託開発が儲けのほとんどですのでお客さんの都合により左右される面も多いのですが、それは今後の課題として取り組んでおり、メンバー各自の貢献度としては非常に満足しています。したがってこのところ昇給も大盤振る舞いで、1万から5万円くらい一気に昇給しています。メンバーはもちろん喜びますし、さらに一流目指して励んでくれます。いわゆる「勝ちのサイクル」に乗っかれるかどうかがチームにとって重要だと考えています。スポーツなどでも勝ち方を知っているチームは勝つためのコツをつかんでいて、ほとんどまた次も勝てるのです。勝ったことがないチームは努力の割りになかなか勝てないのです。最初の勝ちをどうやって実現するのかがリーダーの力量で、後は都度きちんと評価して、目標を明確にしていくことによりメンバー各自が勝つための動きを自らとっていくものです。

 最近、数学者の藤原正彦さんの本をたくさん読んでいたのですが、「指導者の最大任務は、率いる人々に勇気と楽観を与えること」という表現がありました。まさにその通りだと思います。メンバーが困難に立ち向かっている際に、思う存分やれ、後のことは心配するな、と言ってあげること、その一つとして昇給やボーナスは心配するな、その代わり自分の目の前のチャンスを逃がすな、君なら成功できる、と言ってあげることでしょう。

「自分で選んだ仕事」

 皆さんは自分の今の仕事をどう考えていますでしょうか。かなりの割合で今の仕事や環境、待遇に満足していない、という人が多いそうです。IT関連でもまさにその通りで、日経コンピューターなどを読んでいると、そんな記事が目につきます。

 仕事は自分ひとりではどうすることもできない面も多くあるもので、特に若いうちは自分の責任が軽い代わりに自分の判断で動ける範囲も狭く、欲求不満も多いことでしょう。たまたま良いリーダーや良いお客さんに恵まれて、満足な仕事を続けている人もいるかもしれませんが、割合としては少ないのではないかと思います。

 私自身は、現在の会長が設立した会社に学生時代からアルバイトで関係していて、会長との面識もありましたので、かなり今の勤務先を把握した上で就職したのですが、それでも3年、否、5年間くらいは不満の塊でした。会長とは毎週の会議で討論というか、喧嘩が続いていて、他から引っ張ってきた上司に振り回されたり、自分の後輩たちには、会社の言うことは間違えているから従うな、とまで指示していました。今思えばやりすぎという気もしますが、当時の私は勝ち方も知らず、しかし、言われるとおりにやってもうまくいくはずがないという気持ちから、ひたすら戦うしかなかった気がします。会社を辞めようと考えたことも何度もありましたが、会長からは「逃げるのか!」と叱られ、私としてはなんとしても当時の上司・先輩たちを跪かせるくらいのことをしてから辞めようと考えました。そのためにはなんとしても圧倒的な成果を見せ付けるしか道はなかったのです。腕には自信があったので、チャンスさえつかめればと常に考えていました。その後本当にチャンスをモノにして徐々に勝てるようになり、そうなると良いメンバーも集まり、良い仕事も集まるという「勝ちのサイクル」が回り始め、後はそれをどう拡大して発展させていくか、というステージになってきたのでした。

 「自分で選んだ仕事は苦労とは言わない」という言葉を、近所の定食屋さんのトイレで見かけました。はっ!と気がついた感じでした。仕事に不満があるというのは、勤務先や上司、しまいには、お客さんにまで何とかしてもらえるだろうという甘えなのかもしれません。自分はそれなりにがんばっているのに、周りが評価してくれない、環境が悪いのだ、と、他人のせいにしてしまっているから、不満を感じるのでしょう。そういう気分になったら、もう一度冷静に考え直してみる必要があると思います。そもそも今の仕事を選んだのは自分自身ではないでしょうか。自分の力が足りないのだとしたらそれも自分の努力不足です。良い仕事に恵まれないとしたら、自分で本当に良い仕事を獲得する努力をしていますか。給料が安いのは自分が稼げていないからではないでしょうか。結局自分を良くすることができるのは自分だけなのです。他人のせいにしているうちは決して良くならないでしょう。

 もし、自分の努力以上に仕事や待遇で恵まれているとしたら、それはある意味危険信号です。上手くいっているのは自分の力でなく周りの努力の結果だとしたら、そのチームでの存在価値がなくなる時期が来るでしょう。若いうちはそうやって先輩に助けてもらいながらも先輩の期待通り、あるいはそれ以上に成長すれば恩返しができます。しかし、謙虚さを失ってしまったら、努力しなくても上手くいくと勘違いしてしまったら、きっとすぐにそれが暴露されて落ちていくことになるでしょう。

 私が多少成功して、父にそういう話をした際に毎回言われることが、「奢れる者は久しからず・・・」ということです。自分の努力に見合う成功、あるいは、大抵は努力に比べてまだ評価が低いな、というくらいの気持ちが良いのかもしれません。自分はまだまだいけるはずだ!という気持ちです。それと共に、今の状態は周りの力によるところも多く、自分は周りに活かしてもらっているのだという感謝の気持ちも大切です。もちろんどれだけがんばっても全く評価されない組織もあることでしょう。それはそういう場所を選んだ自分の失敗です。取り返すための行動をしなければならないでしょう。いずれにしても、自分の仕事は自分で選んだのですから、それを苦しいといっているようでは駄目なのです。目の前に苦しいことがたくさんあるから遣り甲斐があるのです。

 今の仕事に不満のある方は是非もう一度謙虚に分析してみて欲しいと思います。本当に周りのせいで上手くいっていないのでしょうか?

2007.5.6

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from 2007/1/13