自分で仕事を取る

 このところ連続更新です。人と話す機会が多いとネタが豊富ということは間違いないようです。今日は新卒採用の面接を行い、めでたく1名内定となりました。彼はインターンシップで会社に1ヶ月くらい来てくれて会社の様子もかなり把握していましたし、私の方も安心して採用したいという、相思相愛のケースです。即戦力の実力を持っていますし、前向きながら謙虚な姿勢が好印象で、これからの活躍が期待できます。まずは入社までアルバイトとして仕事に少しでも参加してもらいながらプロのレベルに慣れてもらう予定です。

 さて、採用の面接以外にも、昇給の面談を続けていまして、特に若手の社員との面談は非常に大切な機会です。私はいつでも何でも相談してね、と言っているのですが、やはりきっかけが難しいらしく、なかなか自分から直接仕事に関係すること以外の話をしにきてくれません。しかし実際話を始めると今後の方向性を考える上でとても参考になる考えを披露してくれることが多く、もっと会話ができる、あるいは意見が言いやすい環境を作っていかねばと反省しています。

 私が直接見ているソフト開発の部署では、隣に座っていてもメールを使ってコミュニケーションをするくらい、電子化が進んでいるのですが、大抵新しく部署に加わった方はそれに戸惑うようです。相談したいことがある場合に直接声をかけると相手の作業が中断してしまい、ソフト開発のように思考作業がメインの仕事ではそれがかなり能率や品質に影響してしまいます。そこでメンバーはいつの間にか基本はメールで、打ち合わせが必要な際にはメールで時刻を調整するようになりました。メールですと作業が一区切りついたときに見ることができますので、思考を中断することがかなり減らせます。他のメンバーの雑音にもなりません。さらに履歴が残るという意味でも仕事では役に立ちます。新しく加わった人はほとんど誰も話をしていないのに、仕事が連携してどんどん進んでいくのにびっくりすることでしょう。文章を書く練習にもなりますし、日本語がおかしい場合の指摘も会話より確実にできます。ソフト開発の部隊が仕事をしているフロアでは本当にマシンの音しかしないくらい静かです。考える作業には最適だと思うのですが、そういうのが苦手な人にとっては非常に苦痛らしいです。そのあたりでもこの仕事の向き不向きがわかるくらいかもしれません。

「自分で仕事を取る」

 若手と面談をしていて、このところの傾向で興味深いのが、今後どのような自分を目指したいか、という質問に対してかなりの人が、「自分で仕事を取れるようになりたい」と答えることです。数年前まではほとんど出てこなかった回答です。

 メンバーの中には管理的な面でも力を発揮して行きたいという人と、技術者として活躍をし続けたいという人の2パターンがいます。どちらかというと後者が多い気がしますが、そのメンバーでも自分で仕事が取れるようになりたい、と答えるのです。もっとも、社長という立場でありながらプログラミングも楽しそうにやっている私を見ると、そういう管理者なら良いかな、と思ってくれたりもしているようですが。

 私の方針として、「得意分野で勝負しろ」ということがあります。それこそソフト開発のメンバーは耳にタコができるほどこの言葉を聞かされていると思います。著書でもひたすら得意分野を持つことを主張し続けていますが、得意分野で勝負するには自分で仕事を取ることが一番確実なのです。

 たまたま来た仕事、あるいは先輩から指示された仕事というのは、自分の得意分野の仕事とは限りません。先輩からの仕事はそれでもわざわざ苦手なものをやらせることは少ないと思いますので、多少は自分の得意分野に近い仕事の可能性が高いと思いますが、それでも以前行った仕事と同じような仕事であったりして、自分の得意分野をさらに伸ばすのに役立つ仕事かどうかは微妙なことが多いでしょう。

 したがって、一番良いのは自分で自分のやりたい分野の仕事を取ってくることなのです。世間一般には、仕事を取ってくるのは営業の仕事、という印象がありますが、私はそれが理想だとは思いません。特に技術者は自分の目指す分野がある場合がほとんどですから、仕事もそれに合うものが欲しいはずです。そういう動きは中小企業だけではないはずです。実際私のところで開発をお手伝いしている大手のお客さんの所では、技術者が主体となって事業の方向性を会社にアピールし、技術者が会社やお客さんを動かしているような印象が強いのです。得意分野がはっきりしている人ほどそういう動きをしていると思いますし、そういう人が会社の発展に重要な役割を担うことになっているのだと思います。営業の担当分野は新規事業の開拓というより、開拓できた分野の展開という感じなのだと思います。展開もちろん会社としてはとても重要なことです。

 いずれにしても、社内の若手から「自分で仕事が取れるようになりたい」という話が出てくるというのは会社にとってとても頼もしいことです。

 自分で仕事が取れるようになるためには、いくつかポイントがあります。

・ニーズを把握しておくこと。

・得意分野を目に見える形でアピールできるようにしておくこと。

・アピールするのに必要なコミュニケーション力・一般常識を身につけること。

・信頼できる部下・仲間を身の回りに増やすこと。

この中で一番時間がかかるのが、最後のポイントです。一人でできる仕事量は少ないですし、一つの仕事に集中してしまうと次のチャンスを逃してしまいます。採用活動は人事部に任せる、などと言っているようでは、自分が本当に欲しい人材を集めることはできません。私の会社では採用活動も部署ごと、あるいは欲しい人が自ら動くようにやっています。もちろん人材を集めるためにも、得意分野を目に見える形でアピールできるようにしておくことはとても大切ですし、コミュニケーション力も重要です。目標が明確になったら具体的に手順を考え、実行していかなければなりません。誰かがやってくれると思っていてはいつまでも本当に自分が望む状態にはなりません。

 最近は著書を読んで応募してきてくれる方も増えてきて、そういう方たちは将来の目標は?という問いに対して「自分で仕事が取れるようになりたい」と答えてくれる人が多いのもうれしい限りです。私自身がそうやって来ましたし、メンバーにもそうやって活躍して欲しいので、そういう考えの人には最適な会社だと思っていますし、今後ますますそういう会社になっていけると思っています。最近うれしいのが、若手メンバーが学生さんに対して、「うちの会社は遣り甲斐があって仕事が楽しいよ」と自らアピールしてくれることです。幹部が会社のアピールをするのはどこでもあたりまえですが、若手が心からそうアピールしてくれる会社というのは理想的です。

 一度きりの人生ですからし、嫌でもやらなければならない仕事ですから、どうせなら自分の好きな分野、得意分野で活躍した方が遣り甲斐も感じられますし、成功できると思いませんか?得意分野で勝負しましょう!

2007.5.9

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from 2007/1/13