人と会うこと

 昨日は先日著書を縁に意気投合した萩野様のご好意で、会社でIPv6 tutorialを開催しました。萩野様は大学で教鞭もとられている方ですので、講義もスライドを使い非常にわかりやすくポイントを押さえた内容で、メンバーもIPv6を短時間で把握できたことだと思います。OpenBSD,FreeBSDなどのホストを何台か準備し、実際にIPv6パケットを観察したりする実習も行いました。講習会終了後はレストランに移動し、会食しながら雑談に花を咲かせました。非常にためになる内容ですので、社外の知人もお誘いしようかと考えたのですが、萩野様が、会社のメンバーの方々と交流を図りたい、とおっしゃってくださり、メンバーだけの参加としました。一流の方と会話をすることはとても良い刺激になります。

 詳しい方に相談できるというのは、つまらないことで引っかかるのを省略でき(試行錯誤も勉強になる場合もありますが)、圧倒的な安心感があるものです。私自身は情報関連の学校を出たわけでもなく、就職してからも手本にできる人が身近におらず、ひたすら独学でプログラミングを身に着けてきましたが、初めての技術は毎回試行錯誤の連続で、できたとしてもそれが一般的に正しい使い方なのかなど、不安を感じながら仕事を進めてきました。もちろんオープンソースのプログラムコードを参考にしたりすることもできますし、毎回できるだけ自分で実際に使うようにして、安定性の確認を続けたりして徐々に不安を確信にしてきたわけですが、それはそれで試行錯誤により得るものも多かったものの、遠回りも多かったと思っています。

 最近ではインターネットをはじめとした情報が溢れ、容易に答えを見つけることもできますし、掲示板やメーリングリストなどに質問を書けば誰かが答えてくれることも多くなり、便利なことは確かなのですが、単純に答えだけ得てしまうことによる背景の欠如や、教わる努力・苦労を知らずに解決してしまう怖さがあると思います。プログラミングは職人的な面もあり、一流の人には誰もがなれるわけではなく、そういう方に教えていただくにはそれ相応に教わる側の努力が必要ですし、一流の方に相手をしていただくためには自分自身も磨いておく必要があるものです。そういう姿勢が自らを高めていくのだと思います。

 同じ教えてもらう行為であっても、答えだけ聞いておしまいではなく、実際にその方とお会いしたり、あるいはメールでもコミュニケーションをしっかり重ねればまったく価値が違ってきます。一過性のお付き合いでなく、長いお付き合いを成功させるためにはgive&takeのバランスが大切だと思います。どちらか片方が一方的に得るばかり、あるいは与えるばかりという関係は長続きしません。経験の差が大きく、与えるものなど何もないということではなく、相手に与えられるのは知識だけではありません。会話をしていて楽しい気持ちになってもらえるだけでも良い気分転換の機会を与えられたわけですし、教わったことが確実に成長につながっていることを見せられれば、教え甲斐を感じてくれるでしょうし、そういうことから人間同士の付き合いが生まれ、それが仕事の上で一番大切な人脈にもなるわけです。

 さまざまな方とお付き合いすることは、人生最大の勉強の場になります。井の中の蛙状態を防ぐこともできますし、刺激を受けることによりやる気が出ることも多いものです。本を読むだけでもそういう経験ができますが、やはり実際に会って話をすることは数段大きな刺激を受けられます。

 プログラマーの仕事はついつい会社に篭って黙々とコンピューターと向き合う時間が長くなってしまいます。人と会うために外出したりするとプログラミングが進まないということもあります。その為か自ら人と会う機会を増やそうという人が非常に少ないと感じています。しかし、人と出会うチャンスというのは作ろうと思って作れるものではありません。自らも積極的に自分を公開しないときっかけができないでしょうし、チャンスがあれば何とか都合をつけてでも会おうという意思がなければ実現できません。自分自身でできることは少しでも前倒しで進めることを心がけ、突然のチャンスに備えておくことが大切です。

 困ったときに味方になってくれる人をたくさん作り、自分も相手の方が苦しいときには助けてあげる気持ち、これが仕事を安定して進めるための重要な財産になります。日ごろコミュニケーションの努力もせずに自我ばかり主張していて、気がついたときには四面楚歌、ということにならないよう、人と会う機会を大切にすると良いと思います。

2007.5.25

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from 2007/1/13