WIDEプロジェクト

このところすっかり更新が止まってしまっていましたが、我ながら良く乗り切ったと思うほど忙しく、なおかつプレッシャーと戦っていました。一番の原因は著書の改訂版の執筆作業で、先日ようやくネタを書き終えたところでまもなく紙面校正になるところなのですが、今回は改訂ということで執筆期間を2ヶ月しかもらえず(踏み切るまでにだいぶ引き伸ばしてしまった私が悪いのですが)、改訂なので適当に、と割り切ればいいのですが、結局ほぼすべて見直し、書き直し、本当に間に合うのかという状態でしたが、何とか執筆用に購入したVAIO-TZの効果で乗り切れました。作業全体の5割は帰りの特急電車の中で書いたという感じです。出版の予定が確定したらまた報告します。

仕事も非常に忙しく、これぞ社長、というくらい、自分でプログラミング関連の仕事をすること以外の仕事が山ほどあり、しかもそういう仕事は大抵精神的負荷が高いものが多く、大変でした。さらに、LBI(Linux Business Inisiative)の理事として勉強会の開催や、WIDEプロジェクトへの参加の調整などもあり、他にもここには書けないような社内の細々した問題の対応など、気が狂いそうでした。

ストレス発散のため、VAIO-Aという巨大なノートPCも購入してしまいました。最近お気に入りの映画マトリックスシリーズのPCゲームをやろうと思ったところ、VAIO-TLet's Noteではグラフィックが弱くて、2本あるゲームのうち古いほうはコマ送り、新しいほうは起動すらしない、という状況で、持ち運びが無理でも高性能なノートPC(ディスクトップは置き場所の問題で妻に禁止されているので)を探したのですが、もともとゲームはあまり好きでないので、ある程度楽しんだら他の使い道がないと無駄だ、と考え、いわゆるAVノートを選びました。フルHDの液晶、ブルーレイディスク、地デジチューナーを装備し、さらにHDDRAID0で高速化された、巨大なノートPCです。マトリックスのゲームは2本ともすべてやり遂げました。ただでさえ寝不足なのに、さらに睡眠時間を削ったのですが、ストレスは寝るだけでは解消できませんものね。

雑談が長くなりましたが、おかげさまで本書「プログラミングでメシが食えるか!?」は地味ながらも着実にご購読いただいているようでして、まもなくトータル1万部を超える冊数を世に出すことになります。勢いで書いたような本ですが、技術書と違い、私の執筆時点の本音をかなり暴露し、批判も多かったですが、賛同も多く、この本を通じて知り合えた多くの方々との交流も私のすばらしい宝となりました。

本書を通じて知り合えた萩野さんとは密に情報交換を続け、萩野さんのお誘いのおかげで、WIDEプロジェクトに参加する話も本格化しました。萩野さんはWIDEプロジェクトのボードメンバーでもあります。WIDEプロジェクトのBSD向けIPv6実装開発プロジェクトのKAMEプロジェクト(現在は完了)の技術的なリーダーのような方です。まずは自社で勉強会を開催したりしていただき、若手も非常に刺激を受け、秋のWIDEプロジェクト合宿に2名参加し、先日のWIDEプロジェクト報告会に出席して、いよいよ参加しようというところまできました。

WIDEプロジェクトは日本のインターネットをはじめとするネットワーク関連の先端であり、産学合同で運営しているプロジェクトで、多くの優秀な学生さんはもちろん、企業からも一流の技術者が参加しており、また、多くの有名企業がスポンサーとなっています。我々の参加も当然企業としての参加となり、研究費を負担しないとならないのですが、一部上場企業と同じ金額をたった20名の会社で負担するのはとても無理で、さらに独立採算制の我社では8名のソフト開発部隊で負担することになり、お金はないが技術力はだすから、と無理をいい、何とか研究費は低く参加させていただけそうです(それでも8名では大きな金額ですが)。

WIDEプロジェクトは私が大学生の頃にはすでに存在していたのですが、私は五流大学の工業化学化ですので、全く存在すら知らず、社会人になっても、相当後までIT関連の本格的な仕事に関われなかったため、WIDEプロジェクトの存在を知ったのはネットワーク関連を本格的にやり始めた後で、知ったところで人脈もなく、そもそも参加したくても企業規模や知名度からして無理だろうと考えていました。

著書のおかげで萩野さんと知り合い、ご紹介いただいたおかげでこのような道が開けてきたのですが、私としては我社にきてくれたメンバーが、小さい会社だから先端のプロジェクトに関われず、一流の方々と交流できないということになってしまうようでは、採用し彼らの人生を多少なりとも預かる立場として申し訳ない、という思いがあり、なんとしても参加したいと考え、先日のWIDE報告会では大企業のスポンサーの皆さんがいる会場でマイクを持って質問をし、小さい会社のメンバーは参加できないというのは、技術者の機会を差別しているのでは?というような失礼な質問をし、村井先生が失礼な質問にもかかわらず丁寧にプロジェクトの問題などを説明してくださり、WIDE側としても参加してほしいと考える人・企業には個別に何とか対応することも考えるから、と、何とか道が開けてきたところです。

WIDEプロジェクトでは村井先生や砂原先生といった、ネットワークのトップメンバーはもちろん、28倍理論を説明されている前川先生をはじめ多くの一流の方々が関わっており、大手企業の技術者や中小規模でもしっかりした固有技術を持っている会社が多数参加しています。私がまだ若い頃、CADの開発販売に行き詰まり、出向に出ていた頃があります。その派遣元であった会社も参加されていて、当時私にネットワークをトレーニングしてくださった松山さんにも再会できました。私がここまでネットワークにこだわったきっかけは松山さんにとてもかなわない悔しさでした。ようやく少しは追いついてまともにお話ができるようになったかな、と感慨深いものがありました。参加している学性さんのレベルも高く、我社のメンバーも相当刺激を受け、私自身もメンバーが恥ずかしい思いをせずに参加してくれるように、ますます会社のステージを高めなければと考えています。もっとも、悔しさは本気になるためのとても大切なきっかけだとも思っています。

事業部を作ったとき、1冊目の執筆を決めたとき、社長を引き受けたとき・・・未知の世界の怖さと共に、これから開ける可能性に胸がときめいたものでした。WIDEプロジェクトへの参加も、だいぶ私自身の立場が違いますが、期待と不安でワクワクしています。目の前のチャンスに思い切って飛びつけるかどうかが、私の人生のすべてだったと信じていますので、今回も飛びつきます。ただし今回は私というより我社の若手が飛びついて、羽ばたいてくれるチャンスだと思っています。source then spec同様、何事もまずはやってみて、それから考えれば良いのだと信じ、メンバーと楽しく参加してみようと思っています。

2007.10.15

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from 2007/1/13